2019年10月から携帯電話の契約期間内の端末代を含めた支払総額を利用者に示すことを大手携帯会社に義務付けると2019年7月4日に日本経済新聞が報じた。
契約1年目だけ料金を割り引くサービスなどがあり利用者が支払総額を把握しづらい状況を改善し、各社の料金を比較しやすくして値下げ競争を促すのが狙いとのこと。
総額表示をすることが本当に利用者にとってわかりやすいものになるのか、また、総額表示による懸念事項はないかを考察する。
目次
大手携帯会社(キャリア)の料金プランはわかりにくいのか
キャリア各社の2年定期契約による料金プランが割引の有無でどの程度差があるかを定額プランと従量プランでそれぞれ比較する。
<定額プラン>
キャリア | プラン | 最低月額 | 最高月額 | 通信量 |
---|---|---|---|---|
ドコモ | ギガホ | 3,980円 | 6,980円 | 30GB |
au | auフラットプラン20 | 4,000円 | 6,000円 | 20GB |
ソフトバンク | ウルトラギガモンスター+ | 3,480円 | 7,480円 | 50GB |
<従量プラン>
キャリア | プラン | 最低月額 | 最高月額 | 通信量 |
---|---|---|---|---|
ドコモ | ギガライト | 980円 | 5,980円 | 1-7GB |
au | 新auピタットプラン | 1,980円 | 5,980円 | 1-7GB |
ソフトバンク | ミニモンスター | 1,980円 | 8,480円 | 1-50GB |
※従量課金プランの場合は使った分だけ料金が発生するため、最も多く使った場合の料金を最大月額としている。
定額プランで比較すると、最大で4割~6割程度の割引になっている。しかし、最大の割引を受けるには複数の割引条件に合致する必要がある。
利用者にとって何がわかりにくいのかと言うと、そのプランで最大どれだけ月額料金を支払う可能性があるかが見えないのである。最大割引後の金額のみが前面に表示されており、割引前の料金は下の方に小さく書いてあるだけなのだ。
ちなみに、最大の割引を受けられるのは3社とも以下の3つを全て満たした場合のみであるため、1人での申込や光回線が必要ない人は最大割引を受けられない。
- 家族複数人での契約(ドコモ・au:3人、ソフトバンク:4人)
- 期間限定割引
- 光回線とのセット割
格安SIMの料金プランはわかりやすいのか
大手携帯会社に料金プランのわかりやすさを求めると言うのであれば、格安SIMの料金プランはわかりやすいのだろうか。
結論から書くと、基本的にはわかりやすいと言える。
なぜならプランの最大料金が前面に表示されているため計算しやすいのだ。格安SIMでもキャンペーン割引などはあるが、月額料金の上限が見えている安心感は大きい。
ただ、UQモバイルとワイモバイルが提供している、5分かけ放題付のプランはキャリアと同様、割引前料金が見えないので注意が必要である。UQモバイルはKDDIグループ、ワイモバイルはソフトバンクグループのサブブランドの位置づけであることが影響しているのだろうか。
両社ともプランS、M、Lの割引前料金ははそれぞれ2,980円、3,980円、5,980円なのだが、添付画面の通り、料金表には割引前の金額は記載されていない。
<UQモバイル>

<ワイモバイル>

総額表示の懸念事項
2年契約期間中の割引合戦にならないか
そもそもの方針である支払総額について、何をもって総額とするのかが不透明である。日本経済新聞の記事では2年契約などの期間契約の利用者に対して総額を伝える指針とされているため、2年間での支払総額を伝える可能性が高いと思われる。
「2年総額〇〇円」のような書き方で、間違ったことは書いてないが実態とかけ離れたものにならないかが心配である。
一方、内閣府の消費動向調査によると、携帯電話の買い替え年数は4.3年いう統計が出ていることから、多くの人が4年を超えて携帯電話を使っていると想定される。
携帯電話は4年以上使うにも関わらず、2年分の支払総額で価格競争が起きても意味がない。極端な話、前半2年は安く設定し、後半2年を高く設定することもできるのである。
利用者としてもキャリアの複雑な料金プランにダマされないようにする眼力が必要になるだろう。
機種代金最大半額はどのように説明するのか
ドコモの「スマホおかえしプログラム」、au・ソフトバンクの「機種代金最大半額」は、3年ないし4年の分割払いで端末を購入し、2年使用後に返却することで残りの支払いが免除されるというものである。
契約期間と支払期間が異なるものを合わせて説明するのは混乱の元ではないだろうか。
利用者が注意すべきことは何か
上の「大手携帯会社(キャリア)の料金プランはわかりにくいのか」で書いたように、キャリアの料金プランがわかりづらい理由は、プランの月額料金の上限が見えないことにある。
従って、利用者が注意すべきはたった1つ。
「割引がない場合の月額料金はいくらか」
契約時点で上限を把握していれば、利用期間が2年を超えたら急に料金が上がったと戸惑うこともない。
まとめ
総額表示により料金プランの比較がしやすくなることが期待されているが、個人的には大手携帯会社がすんなり従うとも思えない。
複雑な条件を付けたり、わかりにくいキャッチコピーでごまかされないように、利用者としても注意する必要がある。
割引がない月額料金をベースに考えれば総額の計算も利用者自身で容易にできるだろう。割引はあくまでもおまけで、割引前の料金を支払い続ける価値があるかどうか、という点で検討するのが良いだろう。
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